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(試合の)コースを作るということ(★★★-2)

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試合用コースのウラバナシ

ご存知の方も多いと思いますが私は最近よくコースを作成させていただいております。

試合のコースに関して、思想や狙いなどが語られることも多くはないと思いますので、コース作成者が何を考えているのか少し語ってみたいと思います。

コース作成の意図を知ることで、試合に向けた練習だけでなく、コース発表前の練習コース作成や練習内容に活かせる部分もあると思いますので、ご参考にしていただければ幸いです。

なお、これはあくまで私の私見であり、他のコース作成者に当てはまるものではないことをご承知おきください。

コースの要件

コースの要件として、まず競技規則書に則った形が求められます。主な要件は以下のとおりです。

 

■コース要件■
・コースの標準時間は 4 分 以下 、制限時間は 10 分 以下
・ボックスは1か所以上3か所以下
・前進か後進のスラロームが1か所以上3か所以下
・ボックスの大きさは5.5m~6.5m、確輪サイズは0.35~0.45m×(乗用:1.75~1.9m、貨物:1.8~2.0m)
・ボックスの出入口は1.8~2.0m(←ほぼ形骸化)
スラロームの幅は3.5~4.0m、枝の間隔は3.5~4.0m、枝の長さは1.3~1.7m、枝は10本以内
ただし、特別規則書等で上書きができますし、基準を変更することもできますので、まあ目安と捉えていただければ。結局は出題されたコースが全てです。
 

ちなみに、車両規定は以下です。

■車両規定■
貨物・・貨物自動車は、車両総重量5000kg未満、最大積載量3000kg未満のキャブオーバータイプの貨物自動車
乗用・・乗用自動車は、排気量が1,900cc未満の乗用車。 軽自動車、4ナンバーを除く

 

規則書を読んでみよう!学生自動車連盟のHPからダウンロードできるゾ

コース作成で重視する点

私はコースを作成する上で、以下の4要件を重視しています。

■コース作成ポリシー■
① 完走率が高いこと
② 実力が反映されやすいこと
③ 試合コースの練習を通じてフィギュアの能力が総合的に向上すること
④ 最低1つはユニークな要素を作ること
①完走率
まず①ですが、これは私なりの優しさ表現だと思っています。
試合に出るということは、皆さんが練習を積まれて挑まれているのだと思います。レベルや環境はそれぞれでしょうが、熱意を持たれているという点は共通だと信じています。
ただ、例えばがノウハウが途切れてしまった大学などは、大いに苦労することもあるでしょう。その中で結果がTOばかりになってしまったらどうでしょうか。その中で今後のモチベーションを上げることは難しいと思っています。
なので、まずはタイム(結果)を残す、その上で改善する、というプロセスに入っていただきたく、①のポリシーを持っています。
逆に、このポリシーで作られたコースで完走できないのであれば、(少々厳しい言い方ですが・・)本当に練習不足としか言いようがありません。例えばボックスがそもそも完走できなければ、それは大会で結果を出す以前の問題ですから、TOでも止む無しと思います。でも安心してください。こういう場合は、我々に是非練習を支援させてください。(だいたいそういう大学からは声がかかりませんし、そもそもこれが読まれてもいないという悲しい現実・・なのでこちらからも結果をみてアプローチします。)

目標完走率は8~9割と考えています。
②実力反映
大前提として、Aコースは難しく、Bコースは易しく設定しています。要するにエースはAを選択せよ、という暗黙のメッセージです。
なので、あくまで個人的には、(語弊を恐れずに言えば)Aでの優勝が本当の優勝だと認識しています。あくまで個人的には。AB選択の妙で勝つのではなく、正々堂々やりましょう、ということです。

その前提の上、実力が反映されるコースを①を崩さず作るためには、「通れるには通れる、しかしタイムを出そうとすると難易度が一気に上がる」というコースを作る必要があります。言葉を換えれば、簡単に通れるラインは正解ではない可能性がある、ということです。理想的には、練習を積む度にラインがアップデートされていく、スルメイカ的コースを作るようにしています。
③試合コースによる総合練習
そしてこれが③に繋がります。すなわち、②のラインアップデートを繰り返す中で、その各々のラインが独立した「練習」になるように意識しています。ですから、②の旧ラインの練習は決してムダ足ではなく、その寄り道にも意味がある、ということです。
そしてこれらを鑑みると、うまい人のラインが必ずしも自分のベストラインとは限らない、ということになります。ジムカーナのサイドターンに置き換えれば、うまい人はサイドターンした方が速いが、そうでなければサイドを引かない方が速い、というケースに似ています。自分のレベルに応じた通り方を選びましょう、その方が結果が良くなる要素を入れていますよ、ということです。
 

要するに試合のコースを走り込もうってことだな!

 
具体的にどういう意図をもっていたか、ということは、大会終了後のコース解説で詳しく説明しようと思います。
④ユニークな要素

フィギュアは90年近い歴史があると聞いています。この歴史の中では、過去様々なコースが出題されてきました。今はほぼ見ない「サークル」や「鋭角」などもありました。また、かつてはノンパワステMT車でのフィギュアが当たり前でした。(私もノンパワステの時代は知りません。MTはありました。)
その一方、最近のコースは比較的固定化しており、ボックスを中心として、狭路とスラローム、あとはコースに合わせた何か、というのが定番になっています。

それはそれで一定の合理性があると思っているのですが、一方でそれだけを繰り返す競技でよいとは思っていません。ですから、何かしら一つは「おっ?」と思うような要素を含むようにしています。最近だと2024年度全関Fではボックス内浮缶、狭路内缶を出題しました。2024年度全日F、2023年度全日Fは少しトリッキーな方向転換がありました。2025年度も何かしら面白い要素が入ってきます。

ただ、あくまでも全関Fは全日F前哨戦でもありますので、④が目的になってはいけないと思います。トリッキーなだけではなく、しっかり練習になる、という点が重要です。そのメッセージを是非受け取っていただけると幸いです。

 

ということで、コース作成のポリシーをお話ししました。