趣旨について
本稿では、2023年11月に鈴鹿サーキットで(!)実施された全日本学生運転競技選手権大会の感想を述べたいと思います。
今季の開幕に向けて、前回大会を振り返り、皆さまの練習の励みになれば、という趣旨で執筆しております。
細かい技術的な話は各校の戦略的な機密事項に当たるでしょうから、そこについて詳細な発言は控えます。あくまでも一般論としてお考えください。(これが★★★の難しいところです・・。)
ですので、結果から見える全体的な傾向と、今後の展望について、私見を述べさせていただきます。繰り返しになりますが、あくまでもフィギュアfanのF兄の個人的な「私見」です。
なお、公式結果については、全日本学生自動車連盟HP で掲載されております。
大会結果について
総評
まずは優勝された慶應義塾大学(以下「慶應」)の皆様、おめでとうございます。6部門中5部門優勝、もう一人も準優勝ですから、本当に素晴らしい結果ですし、その努力に心より敬意を表します。
全体的な感想としては、関東では慶應、中央、立教、早稲田の4大学、関西では関西学院と立命館の2大学が少し実力的に抜けているのかな、という印象を受けました。男子の各部門とも、ほぼ上位がこの6校で占められている現状を見ると、チームとして充実した練習をして臨まれたのだと良く分かります。
また、後述しますが、今回のコースはフィギュアに不慣れな方や特に下級生選手にとってはかなり厳しい設定だったとも思います。イレギュラーなスラロームや正方形ではないボックス、浮き缶、進路選択など、コース発表から本番まで時間が長かったとはいえ頭を悩ませたのではないでしょうか。
結果として、TO、DOになる大学も固まってしまったなという印象です。これはチーム事情もありますし、致し方ない部分でしょう。(是非このブログが参考になると嬉しいです!)
上位6校の牙城を崩したお二人に称賛を!
ここで敢えて個別に取り上げたいのは、福岡大学と日本大学です。福岡大学は乗用Bが僅差の5位、日本大学は貨物BがPT30(スタートペナかゴールぺナでしょうか?)をしながらも4位に入っており、上位6校の牙城を崩しています。
お二人はそれぞれチームを引っ張る存在なのだと思いますが、難しいチーム事情の中にあっても大変に努力をされたのだと推察します。フィギュアは究極の団体競技ですから、基本的には各大学の技術力≒各選手の技術力に収束する傾向にあります。その中で飛び抜けた成績を出すことは本当に大変なことです。厚く敬意を表しますし、是非チーム力を更に高めていただくよう、勝手ながら大いに応援しております。
乗用Aの混戦はお見事!
乗用Aは凄まじい混戦でした。生タイムを見れば、優勝した慶應の4分29秒を筆頭に、4分24秒、4分24秒、4分32秒、4分48秒と、30秒以内に上位5名が連なる大接戦となりました。また素晴らしいのは、その5名が、全員接脱缶によるぺナがない、という点です。同乗減点こそ少し差が付きましたが、実力としては非常に拮抗していると見るべきでしょう。私が知る限り何名かは2024も残りますから、引き続き非常に楽しみです。
なお、このような大会での同乗審判には同情します。判定基準がどうしてもクリアでないため、判断に迷われることも多いと思います。可能な限り同乗以外で勝負が決まると良いですね。皆さん、優勝に匹敵する結果だったと思います。
乗用Bはハイレベルな争いに
乗用Bはハイレベルな選手が揃いました。特に慶應、早稲田、中央、立教の各面々は、どの選手が勝っても全く不思議ではない、そのスジの方が名前を見ればピンと来る関東の誇る顔ぶれです。いずれもタイムは3分台、差は15秒以内ですから、手数1~2手差でしょう。特に慶應、早稲田は2秒差、両者ノンぺナ、いやはや恐れ入ります。これぞフィギュアの醍醐味です。中央を含め、彼らは昨年からずっと切磋琢磨している4年同期ですから、良い最終戦だったと思います。立教の選手はまだ2024がありますから、更なる活躍が期待できるでしょう。
貨物は少し差が開いたか
小四の混戦と比べると、貨物はA、B共に、やや差が開いた印象を受けます。特に貨物Aは全員接ありという少し残念な結果になりました。また、貨物Bに関しては、早稲田、慶應、中央の3名が抜けていた印象ではありますが、その3名でも少しずつ差があるように見られました。特に貨物でのトップ層では、ハンドルを極力全切りせず(舵角を減らし)、かつ車速を上下させずに、スムーズにクリアしていくことが大事で、そのためのライン作りが必要です。小四でも大事な考え方ではあるのですが、舵角が大きい貨物ではより顕著に差が表れます。その観点では、トップ層の間でも少し差があると感じましたし、貨物全体を通じてその意図を持って走っていたのは早稲田の小貨Bの方のみに見えました。中央の小貨Bの方は2024がありますから、今後に期待大です。貨物は少し層が薄くなってしまっているのかな、という気もする結果です。とはいえ、十分に見ごたえのある試合でしたし、逆にいえば、2024デビューの選手を含め、チャンスがある年になるとも言えます。小四と小貨の違いを考えながら練習してみてください。
女子の部
ここ最近、女子の部は大変熾烈です。皆さん非常に良く練習されているなという印象です。女子の部の特徴として、ハンドリングや停止時間による差が男子以上に大きい点が挙げられます。多少の手数よりも、まずは操作や動きを早くする、そこに注力すると結果が出やすいと思います。上位勢、特に慶應の2名の選手は実力的にも男子と変わりませんから、皆さまも負けないように引き続きコース攻略にも勤しんでください。また、中央の2名も進歩が著しく、まだ先がある選手ですから非常に楽しみです。
ハンドリングのご参考記事を貼り付けておきますので、是非参考にしてください。
コースについて
今回のコースは、近年の全日本戦の中ではトリッキーなコース構成の部類に入ると思います。一方で、実際の試合での「手数」に関して言えば、比較的少ない部類に入るのではないでしょうか。つまり、上手に解釈ができた大学と、そうではない大学で、タイムの開きが大きくなる類のコースでした。
本稿で申し上げたとおり、細かなコース解釈について具体的に述べるのは適切でないと思いますので、差し控えます。
が、今後もあり得そうなので一般論として「正方形でないボックス」の考え方は、本稿最下部でお伝えしておこうと思います。マニアックなので、興味と知識がある方以外読み飛ばしていただいて結構です。
今後も同様のトリッキーなコースは出題されるの可能性があります。普段の練習から、浮き缶など、少し「えっ」と思うようなコースを考え、思考訓練をすると良いと思います。フィギュアの醍醐味ですから。
以上、大会総評でした。
関東勢は3月の全関東フィギュアに向けて、練習に励んでください。
<おまけ・長方形ボックスの基本的な考え方>
あくまで一般論なので例外はあります。その前提でお聞きいただければと思いますが、例えば以下のような正方形でないボックスが出た場合、正方形の場合と異なる点として、エグりの場所によって有利不利が生じます。
例えば上の場合、黄色のエグりは長辺を使ってエグっているためその効果が大きく、逆に赤色は短辺を使ってエグているため、その効果が小さくなります。大原則としては、このような場合、赤色よりも黄色の向きにより威力がある「ボックス内の回転方向」を選ぶべきです。
例えばこのようなボックスの場合、通常の正方形ボックスであれば、反時計回りになりますね。ですが、長方形の場合はそうとは限りません。反時計周りを選択した場合は、2回目のエグり以降、短辺側に動きが集中します。しかし、立て直しで時計周りを選択した場合、立て直しの後に長辺エグり、1回目の短辺エグりの後に長辺エグりがそれぞれありますから、立て直しと短辺エグりのデメリットを打ち消すことができます。つまり、短辺エグりが負担にならなくなります。最終的にどちらの回転方向を選ぶかは、具体的な車両やコースの大きさによりますので一概には言えませんが、ボックス内の回転方向のパワーバランスが崩れることがある、と覚えておけば十分だと思います。これらを踏まえると、なぜ今回のコースで長方形ボックスの後に「2mの」出口があるか、お分かりと思います。特にAコースにあるような平行移動のパターンでは、逆回りはほぼあり得ません。通常のボックスと同じ回転方向で回るしかない、そうすると短辺に負担がかかります。だから逃げ道を作っている、と解釈できますね。作成者の意図と合っているかは知らんけど。私はこう考えます、という私見です。
何言ってんだこいつ。意味不明。